2年半、考えていたこと。 社名の変更とサイトの公開。

Journal / 2020.1.9 __ Takaya Ohta

約3年半前、「あたらしいポートフォリオサイトを作るときに考えていたこと」というブログを書きました。独立後も、そのポートフォリオを携えて仕事をしてきましたが、これからは新たな社名とこのサイトと共に活動していくことになります。そこで今日は、数年間の制作に際して考えていたことを振り返りながら、この事務所について紹介したいと思います。

ケルンという社名について

kern はドイツ語で「核(コア)」を意味します。
私の仕事は、パートナー(クライアント)の核に手を伸ばし、意匠へと変換することです。
このプロセスが、彼らと社会にとって常に最善であることに尽くします。

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もう1つ、「文字詰めをする(kerning)」という意味もあります。

この仕事の主な最終成果物はロゴで、見た目の評価から逃れることはできません。ゆえにケルンでは、目に見えなかったものを言語化することと、表層に現れた意匠が美しさや耐久性を備えていること、2つの両立を志向していきたいと思っています。

自身の姿を見つめるのは、難しいものです。
何をする会社なのか一言で説明すること、その会社にふさわしい名前。自分の中にすとんと落ちてくるまで、時間がかかりましたが、今ではとても気に入っています。

“私らしさ” ではなく、”あなたらしさ” を形づくりたい

学生時代からデザインを始めてデザイナーになった身として、早く「自分らしい」デザインを身に付けようと焦っていた時期がありました。雑誌や Web で見かける著名なデザインには、一目で見て誰が作ったか分かるものが多く、そういうものを作ることに自分も憧れていました。

今の私の仕事は、それとは真逆の行為ではないかと考えています。組織やブランドのアイデンティティをロゴとして形づくるとき、それは私のものではなく彼らのものであり、その見た目に私らしさを加える余地は少ないと予期しているからです。

ただし、これはパートナーが求めているものを、全て言う通りに作ることを意味しません。ヒアリングやリサーチを通して得られる材料は、プロジェクトによって十人十色です。私の解釈や取るべきアプローチも都度変わり、お互いが掛け合わさることで、2度はないアウトプットになるのだと思っています。

works 2017-2020

ローンチに際しては、10つのプロジェクトを掲載しました。提案数は平均3案。それぞれのプロジェクトには1つの全体コンセプトがあり、その元で3つの異なるアプローチをとった案を制作します。

その30の案たちは、各プロジェクト固有のもので、使い回しが効かないものばかりです。部分的に見るとパスの描き方や、書体の選び方などに手癖は出ていると思います。しかし、相手が考えていたことや話してくれたこと、それらをきちんと打ち返すことがアウトプットに繋がります。

この一連の過程こそが “あなたらしさ” を形づくるために、"自分らしく” ある必要性、つまりこの事務所が担当させていただく意義だと考えています。

あなたにとっては作品であってほしい

あくまで自分の中での解釈ですが、「作品」という単語には芸術のニュアンスを感じることから、自身の制作は「作品」ではなく「制作物」と言うようにしてきました。

一方、矛盾するようで恥ずかしいのですが、パートナーの方々の心には、その制作物が作品として残ってほしいという思いがあります。なぜならアイデンティティのデザインとは、ロジックや機能性だけではなく、携わった人々の思いや感性を多分に含むものだからです。

数ヶ月に渡る制作の中で、それら様々な要素が組み合わって生まれたものに、作品的魅力や愛着をも感じてほしいという気持ちを抱き続けていました。

covers 43

そこで、トップページにかわるがわる現れるロゴには、額縁に見立てた装飾を施しています。各ロゴのコンセプトに基いて、制作時の素材を使ったビジュアルを新たに作成しました。当時のことを思い返しながらデザインに起こす作業は大変でしたが、手から離れたものを改めて見返す時間は貴重でとても楽しかったです。

2020年、抱負

この事務所をチームにしたいです。
2017年から2019年まで、プロジェクトごとにアシスタントを募ったり、マネジメントを委ねてみたり、部分的・段階的に 1+n を試みて、1人でできること/できないこと、チームで取り組むべきことが分かってきました。

これからケルンに来てくださる方へ。
まだ母数が少ない CI/BI デザインという領域での知識を共有しあいながら、おぼろげなこの事務所の姿を、共に形づくっていきたいです。とても幸運なことに、これまで弊所は素晴らしいパートナーの方々に恵まれてきました。これからはその機会を、事務所の一員としてメンバーに提供できるよう尽力します。

パートナーの方々へ。
制作だけではなく、弊所とのお付き合い全般の体験を向上させていきます。私は手を動かすことが好きで、ひとたび制作に入ると、それに没頭してしまう傾向があります。今後、マネジメント/ディレクションの体制を整えていき、スケジューリングから制作進行まで、より満足いただける事務所を目指します。

今まで1人でやってきたのは、決してそれが最良の手だからではありません。ペースは緩やかかもしれないけど、しっかりとチームの組成を進めて、個人としても事務所としても、より多くのオプションを提供していきたいと考えています。

この2年半の制作はとても楽しくて、あと数年はこのままでも良いかなと思うこともありました。それでも社名から自分の名前を消して、コーポレートサイトを立ち上げたのは、仲間と作るということを (心では) ずっと欲していたからです。

そのために、まずは「デザイナー」「アシスタントデザイナー」「マネージメント」の募集を始めます。制作物やこのエントリを読んで興味をお持ちいただいた方は、ご連絡くださると嬉しいです。

謝辞

このコーポレートサイトの制作は、Super Crowds 田中研一さん (@tanaken__1)と隅野美稀さん(@sumison09)にお願いしました。長い間、社名を考えあぐねていた私が、サイトの姿を描くに至らなかったことは言うまでもありません。

目下、ケルンが目指すのは少数のチームです。
個人のポートフォリオではなく、大きなファームでもない、事務所のこれからの雰囲気をぴったりと表現してくれました。このサイトには、私のこだわりはもちろんですが、おふたりのこだわりがたくさん詰まっています。

ほかにも、今の私の土台を作ってくれた monopo、日々の制作の場である GMB、ロゴにモーションを加えてくださったまつうらさん(@Ya_Matsuura)、編集を助けていただいた inquire ジュンヤさん (@junyamori)、ポートレイトを撮影してくれたヤンスくん(@yansuKIM)。そして、これまで弊所にご相談してくださった皆さま。出不精がゆえ、普段伝える機会が少ないので、この場を借りて感謝の気持ちを述べさせてください。

会社としては今年で3期目を迎えます。
ですが、常にまっさらな気持ちで、制作に向かい合いたいと思います。
どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。

#名刺は暖かくなる前には作ります!